医療法人祥佑会 藤田胃腸科病院 日本消化器内視鏡学会 指導施設

潰瘍性大腸炎・クローン病治療 ステロイドに頼らない治療

当院の治療の特徴

従来、潰瘍性大腸炎・クローン病の治療では、基本的な5ASA製剤(メサラジン等)が無効であれば一般的にステロイド製剤(副腎皮質ホルモン)が使用されてきましたが、再発例や難治例となることが多いことが分かってきました。
当院では、可能な限りステロイド製剤を使用せず、GMA(血球成分除去療法)や免疫抑制剤、生物学的製剤を含む新規治療薬などを適宜使用して、患者さまの日常生活に可能な限り配慮しながら速やかな寛解導入とその後の長期寛解を維持するよう努力しております。また、当院は両疾患の患者さまが多く通院されているため、新しい新規薬剤の臨床治験にも常に参加しています。
寛解導入後は、長期寛解維持のために来院状況の確認や治療成績の追跡調査を行い、服薬アドヒアランス(薬をしっかり服用すること)の向上にも努めています。

潰瘍性大腸炎、クローン病はどんな病気?

大腸や小腸の粘膜に慢性の炎症をひきおこし、潰瘍などを生じる炎症性腸疾患(IBD:Inflammatory Bowel Disease)と呼ばれる病気です。
現時点では病気の原因が明らかになっていないため、厚生労働省より難病に指定されています。以前は欧米に多い疾患と考えられてきましたが、近年は日本において患者数が増加してきており、潰瘍性大腸炎は20万人、クローン病は5万以上の患者がいると言われています。また、以前は20-30歳代の若い世代に多い疾患でしたが、近年では特に潰瘍性大腸炎において50-60歳代以上で発症される症例も増加傾向にあります。

症状

主に下痢・血便・腹痛などの症状が1週間以上続き、重症になると発熱や全身倦怠・貧血症状が見られます。潰瘍性大腸炎では血便が高頻度に見られ、粘液の混じったような粘血便が特徴的です。クローン病では血便よりも持続する腹痛・下痢に加えて、肛門の腫れや痔ろう・栄養障害による体重減少も見られることが多く、両疾患ともこれらの症状が良くなったり(寛解)、悪くなったり(再燃)を繰り返すことが特徴の病気です。

診断方法

症状やその経過、および過去の病歴や家族歴等の問診と診察を行い、下部消化管(大腸)内視鏡検査や腹部CT検査・小腸造影検査等で腸の状態を確認して診断します。
特に内視鏡による検査が重要になりますが、当院では当日検査を含めできるだけ早く内視鏡検査を施行できるようにしています。

治療

治療法としては、まず5ASA製剤(5-アミノサリチル酸製剤)の内服や局所治療が中心となります。5ASA製剤が無効であれば一般的にステロイド製剤が使用されてきましたが、当院では可能な限りステロイド製剤を使用せず、GMA(血球成分除去療法)や免疫抑制剤および生物学的製剤を含めた新規治療薬を適宜使用しています。

1. 5ASA製剤(メサラジン、サラゾスルファピリジン)

炎症性腸疾患の基本となる製剤で、経口剤と坐剤・注腸などの局所製剤があり、病変の場所や範囲によって単独または組み合わせて使用します。
近年、pH依存性放出等の薬剤コーティングの進化や投与量の増加によって、従来より有効率が高くなっています。できるだけ高容量の投与で寛解導入を行い、寛解導入後も寛解を維持するために投薬を継続します。
一般的には副作用は少ない薬剤ですが、まれに発熱や関節痛・全身倦怠および腸炎の悪化などの副作用(不耐症)が見られることがあります。

2. 血球成分除去療法(GMA)

腸での炎症によって活性化した白血球(単球、顆粒球)を血液中から取り除き、炎症を抑える治療法です。腕の血管から血液を持続的に採取し、特殊なビーズを詰めた機械で活性化した白血球を除去して、もう片方の腕に血液を戻します。1回の治療は1時間弱で、計10回行います。
他の薬物治療より副作用が少ないことが特徴で、当院では日帰り入院の体制を整えて専門の看護師によって施行しており、できるだけ患者さま一人一人のご都合に合わせて治療を受けて頂けるようにしております。

血球成分除去療法(GMA)

3. 免疫抑制剤(アザチオプリン、タクロリムス)

炎症性腸疾患は免疫の過剰反応による病気であるため、免疫を抑制する薬剤が使用されることがあります。アザチオプリンは免疫を抑制する作用はそれほど強くなく免疫調節剤と言われており、緩やかな寛解導入と寛解の維持に効果を表します。
タクロリムスは強い免疫抑制作用を持つ薬剤で、難治性で重症の症例に使用されますが、血中濃度の管理が必要なため投与開始時は入院加療が必要となります。

4. 生物学的製剤など(抗TNF-α抗体製剤など)

  • 抗TNF-α抗体製剤(インフリキシマブ、アダリムマブ、ゴリムマブ)TNF-αという炎症を引き起こす物質を抑える薬で、クローン病に対する治療効果が非常に高く、クローン病の治療を大きく変えた製剤です。潰瘍性大腸炎にも効果があることが分かり、難治性の潰瘍性大腸炎の寛解導入および寛解維持に使用されています。
  • 抗ヒトIL-12/23p40抗体製剤(ウステキヌマブ)インターロイキン(IL)という炎症を悪化させる物質を抑える薬です。難治性のクローン病に使用されます。
  • α4β7インテグリン阻害薬(ベドリズマブ)腸管粘膜と炎症を起こず白血球(リンパ球)の接着を阻害して腸管の炎症を抑える新薬で、難治性の潰瘍性大腸炎に使用されます。副作用が少なく、今後は中等症の症例や寛解維持効果に期待されています。
  • JAK阻害剤(トファシチニブ)炎症を起こす細胞内でヤヌスキナーゼ(JAK)と呼ばれる酵素を阻害することで、炎症を起こすサイトカインと呼ばれる物質の産生や働きを抑えます。関節リウマチに対する高い効果を受けて、潰瘍性大腸炎にも使用されるようになりました。帯状疱疹などの副作用には注意が必要ですが、従来のステロイド剤や免疫抑制剤・生物学的製剤が無効だった症例に効果が期待されています。

その他にも現在臨床治験を行っていたり、これから行われる予定の新しい薬剤がいくつかありますが、免疫抑制剤とこれらの生物学的製剤に共通する注意点として、B型肝炎や結核の再燃があり、投与前にはスクリーニング検査が必要です。

医療助成制度・特定医療費受給者証の申請について

潰瘍性大腸炎とクローン病は厚生労働省に指定された難病であるため、医療助成の対象となっています。
但し、現在は重症度判定で中等症以上と診断された場合が助成の対象となります。
助成を受けるためには受給者証の交付が必要となり、医師の診断書(臨床調査個人票)と、手続きに必要な申請書や住民票などを用意し、自宅最寄りの保健所へ提出します。
医療証の交付までは数か月かかりますが、承認された場合は申請日から医療証の交付日まで遡って還付を受けることが出来ます。

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